はじめに
喘息・COPD患者さんのCTで見つかる気道内の粘液栓の所見
——流してしまっていないでしょうか。予後に直結するサインかもしれません。
実はこの「粘液栓(mucus plug)」は、喘息・COPDいずれにおいても増悪や呼吸機能低下、さらにCOPDでは死亡リスクとも関連することが、近年の大規模コホート研究で次々と明らかになっており注目されています。
今回はAJRCCM誌に掲載されたレビューをもとに、最近注目されている「粘液栓」の病態生理から臨床応用までを整理します。
私自身も、最近になり、胸部CTを読影する際に注意してみています。
確かに粘液栓がある方は症状が悪い方が多い印象をうけており注目している所見です。
論文の要約
粘液栓は喘息・COPDの重要な病理学的特徴として以前から認識されていましたが、その臨床的役割が深く探求されるようになったのは最近のことです。
粘液栓の形成は、粘液の濃縮、粘液の粘弾性変化、クリアランス障害、線毛機能不全によって引き起こされます。
気管支肺区分粘液栓スコアなどのスコアリングシステムにより、粘液栓量が多いほど臨床転帰が不良であることが示されてきました。
定量的画像処理による新たなスコアリング法も現在開発が進んでいます。
粘液栓量は喘息・COPDいずれにおいても増悪およびスパイロメトリー低下と関連し、COPDではさらに死亡率増加とも関連します。
近年、粘液栓量は喘息における生物学的製剤の有効性を評価する臨床試験のエンドポイントとして用いられており、複数の生物学的製剤が治療によって粘液栓量を減少させ、それに伴いスパイロメトリーが改善することが示されました。
これらを総合すると、粘液栓は喘息・COPDにおける「治療可能な特性(treatable trait)」である可能性が示唆されます。
粘液栓量は現在、臨床的・表現型的・予測的な有用性を持ち、将来のバイオマーカーとしての可能性も期待されています。
ただし、臨床試験への組み込みの拡大、治療効果に関するエビデンスの拡大、評価方法・画像プロトコルの標準化が今後必要とされています。
CTによる粘液栓検出は、研究アウトカムおよび臨床診療への一層の組み込みの準備が整いつつあります。
論文の主な内容
粘液栓の病態生理
粘液栓は、
①粘液の脱水・濃縮
②粘液の粘弾性が液体的な性質から固体的な性質へ変化すること
③線毛の圧排・機能不全、という3つの機序が組み合わさって形成されます。
喘息ではTh2型炎症がMUC5ACの発現を亢進させ「ゴム様」の粘液栓を形成し、好酸球・好中球浸潤を伴います。
COPDでは喫煙がMUC5AC・MUC5Bの過剰産生と線毛障害を引き起こし、リンパ球凝集を伴う粘液栓が形成されます。
評価法
最も広く使われているのが「気管支肺区分粘液栓スコア(Mucus Plug Score, MPS)」で、粘液栓のある区域数を0〜18(20)点でスコア化します。
治療標的としてのエビデンス

喘息領域では2つのRCTが粘液栓をエンドポイントに用いています。
①VESTIGE試験(デュピルマブ、109例、24週)では治療群で粘液栓スコアが減少し気道容積が増加、プラセボ群ではむしろ粘液栓スコアが増加しました。粘液栓スコアの改善はFEV1改善と関連していました。
②CASCADE試験(テゼペルマブ、116例中82例でCT評価)でも同様に粘液栓スコアの減少が示されています。
また、COPD領域でもIL-33抗体tozorakimabの第2a相試験で粘液栓スコア減少(統計学的有意差には未達)と気管支拡張薬吸入後FEV1の改善が報告されました。
考察・臨床的意義
このレビューの重要なメッセージは、粘液栓が単なる「随伴所見」ではなく、①予後予測、②表現型分類(フェノタイピング)、③治療反応性の予測、という3つの臨床的意義を既に持っている、という点です。
著者らは放射線科医に対し、喘息・COPD患者の胸部CTで粘液栓の有無・部位(区域・葉)を日常的にレポートすることを推奨しています。
特に「気管支肺区分の3区域以上」という閾値が、臨床的に意味のある集団を絞り込む目安として提案されています。
一方で、粘液栓を臨床試験の中間評価項目(サロゲートエンドポイント)として規制当局に正式に認証するには、①定量アルゴリズムの再現性(スキャナー・再構成条件間でのばらつき)、②粘液栓が不良な転帰を引き起こすメカニズムの解明、③既存治療(ICS、去痰薬、気道クリアランス法)の効果検証、という3つの研究ギャップが残っていると指摘されています。実際、ICSの効果はSPIROMICSコホートで明確な関連を示せていません。
まとめ│明日からの診療に活かせること
ぜひCOPD・喘息患者の胸部CTを読む際は、粘液栓の有無を確認してみてください。
実際に私自身、最近になり粘液栓の有無には注目して読影をしていましたが、部位(特に下葉優位の分布は増悪との関連が強い)や、区域数も意識的に記載してみようと思います!
肺機能検査、治療反応性についても意識して診療をしていきたいと思いました。
将来の増悪・FEV1低下・死亡リスクの予測につなげることができそうですね。
入院中のリハビリ方針の検討材料として、粘液栓の有無を意識した声掛けをしてみる価値もあると感じました。
論文情報
Bosma CB, Aaron SD, Celli BR, et al. Airway Mucus Plugs in Asthma and COPD: Pathobiology, Imaging, and Implications for Clinical Trials. Am J Respir Crit Care Med. 2026 (advance article).
DOI: https://doi.org/10.1093/ajrccm/aamag309

