最大限の吸入療法をしても「息が苦しい」と訴えられる進行期COPDの患者さん。
この呼吸困難を緩和するために、緩和ケアのガイドラインには少量オピオイドが載っていますが、実際のところ効くのでしょうか。
今回、Eur Respir J.に掲載されたフェンタニル貼付剤まで含めて初めて検証した多施設RCTを読んでみましたのでご紹介します。
なぜこの論文が気になったか
「COPDに対してできる治療は最大限しており、もうこれ以上、呼吸困難を和らげる治療がない」という段階の患者さんに、少量モルヒネを提案するかどうか。
緩和ケアの書籍やガイドラインには載ってはいるものの、近年の試験結果は思わしくなく、私自身も迷いながら処方しているのが現状です。
今回、まだ検証されていなかったフェンタニル貼付剤の検証も加わったと聞いて、興味を持ちました。
一言でいうと
最適な標準治療下でも息切れが残る安定期の重症COPD患者さんに、低用量の経皮フェンタニルまたは徐放性モルヒネを投与しても、プラセボと比べて息切れは改善しませんでした。
オランダ10施設で行われた二重盲検・ダブルダミーのクロスオーバー試験です。
息切れだけでなく、睡眠の質、健康状態、不安、高炭酸ガス血症のいずれにも差はありませんでした。
論文の要約
背景(Background)
COPDにおいてもっとも高頻度かつ影響の大きい症状のひとつが持続性呼吸困難であり、進行期COPD患者の大多数に生じる。オピオイド、なかでもモルヒネが検討され、緩和ケアのガイドラインにおいて治療選択肢として提案されてきた。しかし近年、持続性呼吸困難に対するモルヒネの複数の試験が臨床的有益性を示さず、有害事象に関する懸念も存在する。経皮フェンタニルは、この適応についてこれまで検討されていない。
方法(Methods)
我々は、経皮フェンタニル(12 μg·h⁻¹)、モルヒネ(経口10 mg 1日2回)およびプラセボを検討する、多施設・クロスオーバー・ダブルダミーのランダム化比較試験を実施した。治療期間は3期からなり、各2週間(3日間のウォッシュアウト期間を含む)とした。組み入れ対象は、最適な治療下でも持続する呼吸困難を有し、COPDに起因するmodified Medical Research Council呼吸困難スケールのスコアが3以上、1秒量(FEV₁)が予測値の50%未満、かつ疾患が安定している患者とした。主要評価項目は、Numeric Rating Scale(NRS)による1日平均呼吸困難スコアの変化とした。副次評価項目は、1日最悪呼吸困難(NRS)、健康状態(Clinical COPD Questionnaire)、不安(Hospital Anxiety and Depression Scale-Anxiety)、高炭酸ガス血症(毛細血管血液ガス)、マスタリー(Chronic Respiratory Questionnaire-Mastery)、および睡眠の質(NRS)の変化とした。
結果(Results)
2019年4月から2024年11月の間に、58名の参加者に対して59件のランダム化が行われた(平均±標準偏差 69±7歳、女性54%、FEV₁ 予測値の33±10%)。37名が試験を完了した。試験中止のおもな理由は増悪(n=13)および副作用(n=7)であった。フェンタニル・モルヒネのいずれについても、プラセボとの比較において、平均および最悪呼吸困難、睡眠、健康状態、マスタリー、不安、高炭酸ガス血症、副作用に有意差は認められなかった(嘔吐における差の可能性を除く)。
結論(Conclusion)
本試験は、COPDの持続性呼吸困難の治療において、経皮フェンタニル・経口モルヒネのいずれもプラセボと比較して良好な効果を示さないことを明らかにした。
臨床での意味・自分ならどう使うか
「安定期COPDの慢性的な息切れに対して、オピオイドを投与する」という戦略は、そろそろ見直す時期にきていると感じます。
実際の現場では、COPDに対する標準的な薬物治療を最大限に行っている前提で、以下の方向性で対応をしていこうと思っています。
- 非薬物療法によるアプローチ(呼吸法の指導、送風・ハンディファン、多職種による息切れへのアプローチ)
- オピオイドは「効かない可能性が高いことを共有したうえでの試行」として位置づける
- オピオイド開始時に効果判定の期間と中止基準をあらかじめ決めておく
開始する際には「出口戦略を最初に想定しておく」イメージです。
ただし、当てはめてはいけない場面
本試験の対象は安定期・日常生活下の息切れです。以下の場面には結果を外挿できません。
この点は意識しておきたいところです。
- 終末期の呼吸困難
- 増悪時の急性の息切れ
まとめ
- 安定期COPDの持続性呼吸困難に対し、経皮フェンタニル・経口モルヒネともプラセボを上回らなかった
- 息切れ以外(睡眠・健康状態・不安・高炭酸ガス血症)にも差はなし
- 非薬物療法を軸に据え、オピオイドは出口戦略つきの試行として位置づけたい
- 終末期・増悪時・労作時の息切れには本結果を当てはめない
論文情報
van Dijk M, Mooren KJM, van Beurden-Moeskops W, et al. Fentanyl or morphine for persistent dyspnoea in COPD: a multicentre randomised crossover trial. Eur Respir J. 2026;68(2):2501431.
DOI: 10.1183/13993003.01431-2025
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