ブラ壁から発生する肺癌症例の臨床的特徴を解説

【はじめに】

喫煙歴がある方に、受診をきっかけに胸部CTを撮影すると、多くの方に肺気腫の所見を認めます。この時、同時にブラを認めることも多いですよね。

呼吸器内科医をしていると、頻度は多くないですが、ブラ周囲の壁から発生したと考えられる肺癌の症例を経験します。

胸部CTを撮影し、放射線読影レポートで「ブラ壁に肺癌の可能性があります」と指摘されて、検査目的に呼吸器内科や外科に紹介となるケースも時々あります。

遭遇する頻度はそこまで多くはないですが、ブラ壁から肺癌が発生してくることがありうること+ブラ壁から発生する肺癌患者の臨床的特徴については知っておくといいと思いますので、簡潔にまとめておきます。どこかで皆さんに役立つ知見ですので、ぜひ明日からの診療のご参考にくださいね!!

喫煙者でブラのある肺癌患者の臨床的な特徴

肺気腫は肺癌発生の危険因子と考えられています。

喫煙者のブラも肺癌を発生する可能性があると考えられており、ブラ壁発生の肺癌患者の臨床的な特徴については知っておくといいと思います。今回はブラ壁発生の肺癌患者の臨床的な特徴をまとめた論文を元に、簡潔に記事にまとめてみます。

ブラが無い症例と比較し、年齢は若い

発生部位は上葉に多い(71%)>下葉(26.7%)

組織型は、腺癌(約51%)>扁平上皮癌(約28%)>小細胞癌(約8.9%)>その他

他の既報告でも腺癌が最も多いとのことです。

EGFR遺伝子変異の頻度が有意に低い(3.8%)

ブラの無い症例では24.2%となっており、ブラを有する症例ではEGFR遺伝子変異の検出にはほとんど期待できなさそうです。

EGFR遺伝子変異は非喫煙者の肺癌に多いことが分かっているため、喫煙歴のあるブラを有する症例ではEGFR遺伝子変異が少ないとの結果は妥当だと感じます。

なぜブラ壁から肺癌が発生しやすいのか?

現在、原因として考えられている機序をまとめてみます。

  1. 喫煙者では、ブラ内で再発する炎症+タバコの煙の排出による発がん性物質の蓄積や換気障害が誘因となる
  2. ブラ壁の瘢痕からの発癌

以上のような原因が考えられているようです。

ブラの内部では感染などによって炎症も起こりやすいでしょうから、結果的に癌の発生素地になりやすいのでしょうか。

まとめ

今回は、呼吸器内科医をしていると、時々経験することがある「ブラ壁発生の肺癌患者の臨床的な特徴」について、簡潔にまとめてみました。

呼吸器内科医としては、喫煙歴がある方でブラの周囲に壁の肥厚などの変化を確認したら、(放射線科の読影レポートで特にコメントはされていなくても)将来的に肺癌が発生してくるかもしれないと思って診療をしていくとよさそうですね。重喫煙歴がある高リスク症例では、CT所見をみて、中長期的に経過観察をしてみることを考えてもいいかと思います。

参考文献

  • EIJI Iwama,et al.Characteristics of Smoking Patients with Lung Cancer with Emphysematous Bullae. J Thorac Oncol. 2016;11:1586–1590.
  • 森川ら.ブラ壁発生異時性重複肺癌の1例

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