呼吸器内科医が少ない理由を専門医が解説!

【はじめに】

全国的にみて呼吸器内科医(専門医)の数は、本当に少なく、医師が不足している診療科です。

医師不足の診療科ですが、呼吸器疾患数、呼吸器系の合併症で悩む方々はとても多く、とても需要が高い領域です。

「呼吸器内科に興味があり、進路として考えている」

「呼吸器内科医に興味がある」

「呼吸器内科医が少ない理由を知りたい」

この記事では、このような先生方に向けて、「なぜ呼吸器内科医が少ないのか」を、卒後10年以上の呼吸器科専門医の経験を通した独自の視点も含めて、まとめていきます。

この記事を読むことで、将来、呼吸器内科に進むことを考えている若い先生や、現在内科系で進路に悩んでいる研修医の先生方のお役に立てれば嬉しいです!

主要な内科系の専門医数

まずは専門医の数について資料を提示します。

呼吸器専門医は循環器専門医の1/2以下、消化器病専門医の1/3以下であり、少ない状況です。

循環器専門医14,097名

消化器病専門医20,041名

呼吸器専門医6,201名

(出典:一般社団法人 日本呼吸器学会 ホームページより 2017年11月時点)

呼吸器内科医が少ない理由

それでは、呼吸器内科医が少ない要因、理由について、呼吸器内科医の視点から解説していきます!

1)身近に呼吸器内科医がいないため若い医師の進路の選択肢にならない

若い先生が研修する基幹病院、臨床研修病院に常勤の呼吸器内科医がいない、または在籍していても呼吸器研修ができないような病院も結構存在しています。特に地方に行くほど、常勤は不在になりますので顕著になります。研修中の病院に呼吸器内科医がいないと、将来の選択肢に入らないですよね。

2)独立した呼吸器内科の講座(医局)がない大学・医学部が依然ある

3)医学部の学生時代に呼吸器内科の実習が少なかった・無かった

「大学で呼吸器内科の講座がない」=「呼吸器内科医を育成する医局がない」ので、その地域では呼吸器専門医を育成することができない状況になりますよね。呼吸器内科は歴史的に、例えば循環器内科、腎臓内科、血液内科の講座の一部に組み込まれています(呼吸器内科のグループがあるだけ)。具体的には、循環器内科の教授は、呼吸器診療については分からないですし、おそらく興味はありません。そして呼吸器専門医を育てようという気持ちなんて普通はないですよね。

このような大学では、医学部時代に呼吸器内科で十分な実習を受けることができなくなります。結果的に興味をもつ先生は少なくなります。

4)あまりパッとしないイメージがある

循環器内科(→心筋梗塞の治療!)、消化器内科(→胃カメラ、大腸カメラ!)は、医療に少し興味がある方ならイメージが湧きやすいと思うんですよね。でも、世間一般では呼吸器内科の存在感ってほとんどなく、イメージが湧きにくいのだろうと感じています。

循環器内科の先生って、やっぱりカッコいいじゃないですか!?(笑)

一方で、呼吸器内科医って、あまりパッとしたイメージがないと感じるのは私だけでしょうか(笑)。気管支鏡検査ってきいても、何の検査!?って感じですよね・・・。

5)患者数が多く忙しい診療科

6)呼吸器科専門医は少ないため、専門医がいる病院に患者が集中する

呼吸器疾患自体が多いのに加え、専門医数が少ないので、どうしても専門医が在籍している病院に患者が集まってきてしまいます。次第に負担が増え、仕事が増えて、つらくなっていくという悪循環に陥ってしまうと大変です。どんどん仕事を回していく必要性が出てくるのですが、この負担に耐え切れなくなると、退職していってしまうんですよね。そんな先輩医師をみてきました。

7)肺がん患者の予後が悪い

他の診療科のがん患者の予後と比較し、肺がんの予後は不良です。肺がん患者は多く、かつ予後も悪いのですから、患者家族につらい病状説明をする機会が多い診療科です。

また肺がん患者は、呼吸器系の症状を訴えます。病状が進行して苦しんでいる患者を診ているのも大変です。

こうした理由から、多くのストレスがかかる診療科ですが、逆にこのような仕事でもこなしていける先生は呼吸器科に適正があると感じます。

8)高齢者、老年疾患を診療する機会が多く、治らないことも多い

9)病気だけでなく人としての終末期、最期を診ることが多い

高齢になって体力が落ちてくる、病状が進行して体力が落ちてくると肺炎などの呼吸器疾患に罹患しやすくなります。高齢になると、肺炎だけ治療をすれば退院できるわけではなく、入院で更に体力が落ちてしまう、他の併存症や問題を抱えている方が多いです。老衰の方々も多く、慢性期~終末期をみることが多いです。

10)呼吸器系の症状で苦しむ患者を診るのがつらい

11)目の前で苦しむ患者を治せない

呼吸器内科は、呼吸で苦しむ患者が多いです。「息が苦しいからどうにかしてほしい」と言われても、対応や治療手段がない状況になってくるため、医療従事者もつらい気持ちになります。呼吸器内科が若手の先生に不人気な理由だと感じています。

12)ある程度経験を積んでから勤務医を辞めてしまう

せっかく専門医を取得しても、上記のような仕事の忙しさ、ストレスから急性期総合病院を辞めてしまい、開業医、訪問在宅医、緩和ケア、慢性期病院に転職をしていく先生をみてきました。

せっかく呼吸器内科医として一人前になっても、結果的に辞めてしまうと、地域・社会的には大変な損失ですよね(>_<)

呼吸器専門医の先生方が、持続して働いていけるような勤務体制、環境作りが求められます。

13)急に呼吸が悪くなることがあり、若い先生からは避けられる傾向も

14)新型コロナウイルス肺炎の診療で仕事が増えてしまっている

呼吸器内科が肺炎の診療に慣れているという理由で、状態の悪いコロナ肺炎患者の診療を依頼される病院があります。ただでさえ、コロナ禍前でも忙しい状況だったのが、コロナ診療が追加されることで、相当な業務負荷がかかりました。

病院としても、誰かがコロナ肺炎の診療をしていかなければいけませんので、肺炎を見慣れている呼吸器内科を中心に診療体制が組まれます。私の周りでは、コロナ禍をきっかけに、辞めていった先生もいましたね・・・。

以上が、私が考える「呼吸器内科医が少ない理由」です。

厳しい現状ですが、医師として社会の役に立ちたい!全人的な医療をしたい!コミュニケーションをとりながら臨床医をしていきたい!やりがいを求めたい先生には相性がいい診療科だと思いますよ!!

まとめ

この記事では、卒後10年以上の呼吸器内科専門医が、呼吸器内科医が少ない理由を解説してみました。呼吸器内科は、社会的なニーズがとても高い診療科ですが、専門医が不足している診療科だということを認識頂けたかと思います。

特に内科系で進路を迷っている若い先生方、今後の更なるAIなどの浸透による社会の発展や医師過剰時代の到来を心配し、ニーズの高い診療科で働きたい方は、呼吸器内科医が余る時代は到底来ないので、心配なく働くことができる診療科です!

また呼吸器科専門医を取得した後に、様々な進路を柔軟にとりやすい診療科です。今までの環境であまり呼吸器内科になじみが少ない先生方は、一度呼吸器内科という進路も考えて調べてみて、病院見学などしてみてはいかがでしょうか。

この記事が、少しでも進路に悩む若い先生方のお役に立てたなら嬉しいです!

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